中2の夏休みに過呼吸、9月に登校拒否と、今思えば明らかに精神疾患の前兆と言える症状が出始めていた私。


年は明け2007年1月。冬休みも明けて久しぶりに登校すると、それまでに経験したことのない恐怖を覚えたんですよね。そこからが地獄です。
地獄の日々のはじまり、はじまり。
同じ学校の生徒が怖い
私は地元の中学ではなく、私立の中高一貫校に在籍するお受験組。当時は比較的稀有な存在。
通学路でレーダーを照準される
冬休み明け第1週目。
いつもどおり友人と電車で学校の最寄り駅へ行き、その後は同じ学校の生徒の集団に混じって学校まで歩いて行ったわけですが、この日は私のようすがいつもと違いました。
同じ学校の生徒たちの視線が、体中に突き刺さってくるのです。いや、突き刺さるというか、「レーダーを照準されているような感じ」が正しいかも。その恐怖はまさに命を狙われているかのよう。
実際には私など眼中になかったと思います。だって私何もやらかしてないもん!
でも当時の私は完全に正常な判断能力を失っていて、上級生から下級生まで、そこを歩く生徒全員が私のことを頭のてっぺんから足の先までくまなく観察して、「あの人なんか変だよね」と嘲笑っているようにしか感じられなかったんですよね。
「歩き方が変」
「しゃべり方がおかしい」
「しゃべってる内容もおかしい」
そんな風にみんなの話の種にされている気がするわけです。
友人の横で私の声はどんどん小さくなって上ずっていきます。そんな私の話をみんな耳をそばだてて聞いてはまた笑ってくるような気がして、頭の中が真っ白になって、自分でもわかるほど本当に歩き方が変になるんです。右手と右足が同時に出ちゃうような。
そのときの感覚はたぶん、高所恐怖症の人がスカイツリーの展望台のスケスケの床を踏むのと同じ感じだと思うんですよね。私は高所恐怖症ではないけれど、きっとそうだと断言します。
教室で小馬鹿にされる
最初は登校中にだけ発作的に「同じ学校の生徒が怖い」という現象が起こっていたわけですが、冬休みが明けてから2週目には、教室の中でも「同じ学校の生徒が怖い」現象が起こるようになっていました。
授業中に、たぶん「消しゴム貸して」ぐらいのやりとりだと思うんですけど、ヒソヒソと話す声が聞こえると、絶対に自分の悪口を言っていると思っていたんですよね。
「あの人の姿勢変だよね」
「あの人授業の内容わかってなさそうだよね」
そんな人を小馬鹿にするような会話が聞こえてくるようで、全く授業に集中できなくて、本当に授業の内容がわからなくなるという。
もし本当に「あの人授業の内容わかってなさそうだよね」と言われていたとしたら、大正解です。その鋭い洞察力に敬意を表します。
実際にはそんなやりとりはなかったんだろうけど。だって私そいつらと話したことないもん!
登校中のみならず教室の中でも生きた心地がしなくて、ひとつ授業が終わる度に、どっと疲れるようになっていました。
この世のすべての人間が敵になる
一応2週間くらいは友人と会話をすることで気を紛らわせてなんとか登校していたのですが、冬休みが明けて3週目には、学校の生徒以外の人たちにもレーダーを照準されるようになってしまったんですね。これへぇ~って話ですよね。
元気いっぱいにはしゃぎながら歩く小学生、のんびりと犬の散歩をするおばさん、TSUTAYAのちょっとぶっきら棒な茶髪のお姉さん。人という人が全員私にレーダーを照準してくるわけです。もれなく全員敵です。
そんな状況なので、家の外に出られるはずがありません。一歩外に出たら私は撃たれて死ぬわけですから。
それでも学校へ行かなければなりません。
この期に及んでも「学校に行きたい」と思っていた私。今思えばポジティブな気持ちではないですね。「学校とは行かなければならないところ」という、先祖代々受け継がれた強迫観念によるものだと分析しています。
学校の門まで送り届けてもらう日々
家から出られなくなった頃からポツポツと学校を休むようになりました。「体調不良」を理由に。母には仮病だと思われていましたけど。当時は精神疾患に理解のない世の中だったので、無理ないです。
ちょっとがんばれそうなときには「気持ちが悪いから学校の門まで送ってほしい」と頼んで、車で送り届けてもらっていました。
学校に近づいてくると、リアルに吐き気がしてくるんですよね。おまけに手も震えて、頭の中も真っ白になります。
門まで辿りついても車から降りられず、そのまま帰ることも多々ありました。
今でも忘れられないのは、いつまでも車から降りられないでいる私に母が大きな溜め息をついたこと。
今なら当時の母の気持ちを理解できますが、あの頃の私にはきつかったなー。「なんでお前はこんなこともできないんだよ」と、ダメ人間だと言われているような気がして。
母親に「アンタおかしいよ」と言われる
外には出られない。でも学校に行かなければ。でも外には出られない。
毎日矛盾のサンドイッチが目の前に積まれるわけです。
そして自分でも収集をつけられなくなった私は、ついに発狂します。
いつもどおり学校に送ってもらう車の助手席で、突然大声を上げて泣き出したのです。
「学校に行きたいけど行けない!!!足が動かない!!!フラフラする!!!ああああああああ!!!!!」
涙と鼻水で顔をドロドロにしながらしゃくりあげる私を見て母は、「今日は行かなくていいよ。行くのやめな。帰ろ。」と呟いて、Uターンをしたのでした。
家に着くと、「アンタおかしいよ。病院行こう。」。
母からオカシイ認定いただきました。
自分でもオカシイことはわかってるよ。でも何がどうオカシイのかわからない。
そもそも病院って何の病院?病院に行ってこの状況が良くなるの?
いろいろよくわからないけど、このよくわからないオカシさから解放されたい。普通に学校に行きたい。
しんどい。助けて。
そんな心境でした。