院長が昼休みを取れなくなったことに加担してしまった件。

今日は私のせいで15分治療が押してしまった。さらに15分押してトータル30分押すことになった。

「患者様は神様」と言いたくなるような患者さんばかりなのが救いだったが、待たせたことについて平謝り。

そして私が15分を失ったばかりに、お菓子の一つを食べるくらいの休憩も取れなくなった院長にもまた平謝り(心の中で)。

院長は今体の調子が悪いので、余計に申し訳なく思う。そして、院長が倒れてしまわないか心配している。

そんな今日の歯科労働のお話。

セメントアップに手間取って15分押す。

院長に複雑インレーのセメントアップを頼まれてやった。

隣接面に残すまいとフロスでゴシゴシしようとしたが、コンタクトがきつくて全くフロスが通らない。

仕方なく探針でほじほじすることにしたわけだが、歯頸部付近のセメントは取れてもコンタクト直下のセメントは溜まる一方。

そうこうしているうちにだいぶ硬化が進んでしまって、スケーラーを使う羽目になった。それでも取れないコンタクト直下のセメント。

無理だよなと思いつつもフロスを無理矢理通そうとしたら、ブチンと切れた。3本出して、3本とも切れた。まぁそうなるわな。

最終的に院長に泣きついた。

院長もコンタクトがきついからと、フロスを通すことは諦めていた。

しばらくカリカリしたのち、探針の先を見つめる院長。そして「違うやつ出して」。

ほかの基本セットに入っている探針を取り出したら静かに頷いて、ポロポロとセメントを崩し始めた。スキルの違いを見せつけられたようだった。

院長によって無事にセメントアップが完了し、やっと患者さんを帰すことができた。そして「取れなかったのは探針のせいだよ」と言われた。

どうやら私の使っていた探針は、先が太いものだったらしい。それでコンタクト直下に入り込んでいかなかったと。

なかなか取れないセメントに、まだまだ技術が足りないな、と言われている気がしていたが、今回ばかりは、足りないのは探針を見る目の方だったようだ。

さて、時計を見るとガッツリ15分押していた。アポイントは30分ずつ入っているので、これは大事故である。

取り戻せない15分。

私が失わせた15分を、院長が懸命に取り戻そうとしていた。私も一緒になって、できる限りのことをした。

だけどなかなかうまくいかない。

院長は今、体の調子が悪い。どこかが痛むようだ。

いつもゴミ捨ては院長が行ってくれるのだが、それすらも行けないほど、朝礼に出ることもできないほどしんどいようだ。

動きを見ていると、痛みを庇うような動き方をする。元腰椎椎間板ヘルニア持ちの私にはわかる。

私がセメントアップをしている間なんかは、院長室の椅子に腰をかけている。いつもなら座ることなんて治療するときくらいしかないのに。

失われた15分は失われたまま、診療が進んでいった。

C処からの難抜歯でさらに15分押す。

今日の午前は15分遅れたまま終わるんだろうなと思っていた。

そんな中で始まったC処。

これ保存できるの……?と思うくらい危うい歯。ほぼ残根に近い状態。

患者さんの抜く決心がつかないとのことで無理矢理C処を始めたわけだが、やはり保存は難しいと途中で抜くことになった。

それがまぁ、難抜歯で。

ヘーベルを使っただけで根がパリンと割れてしまった。それだけならまだしも、残った根がなかなか抜けない。すぐそこに見えているのに、ルートチップを使っても、極細ヘーベルを使っても、残根鉗子を使っても抜けない。院長のグローブの中が汗で湿り始めた。

患者さんも大変だろうなぁと思いながら、私は結構院長の方を心配していた。上顎前歯部で、立位で覗き込むような体勢を取っていたので。

結局、タービンで故意的に分割してやっと抜くことができた。所要時間45分。

15分遅れてスタートしたうえに15分押してしまったので、トータルで30分押したことになる。

やばい、かなりやばい。

30分も待たせた患者さんに平謝り。

難抜歯の後の患者さんが午前の部の最後の患者さんだった。実に30分待たせて治療を開始した。

治療が始まる前にすごく待たせて申し訳ないと平謝りすると、「私の治療も伸びることがあるだろうから大丈夫」と言ってくれたが、「本当だったら今頃はもう終わってたのかな~なんてね!」という言葉が本音だったと思う。

30分待たせたうちの15分は私のせいです。本当にごめんなさい。

院長はラストスパートをかけてブリッジを除去した。生活歯だったので最後にプラストシールを使うかと思って準備したら、使わなかった。プラストシールを使わない分、早く患者さんを帰せた。

それでも本来より30分遅れていた。

業者との面談で20分消費。

午前の最後の患者さんが帰ると、院長は今度は業者との面談に入った。ちなみに業者のことも30分待たせていた。

業者との面談はおよそ20分。午後の診療開始まで残すところ10分となった。

院長が休憩を取れないことを確信した。

無慈悲に始まる昼礼。

うちのクリニックでは昼礼をするのは1日おき。今日は昼礼をする日だった。

午後の診療開始10分前にスタートする。そしてそのまま午後の診療に入る。

院長が業者を帰すや否や、無慈悲に昼礼が始まった。

私は退勤時間だからと帰った。

院長が倒れてしまわないか心配。

今院長は体が良くないから休憩を取れなくさせたことが余計に申し訳ない。そして不憫に思った。スタッフにはできる限り1時間の休憩を取らせようとしているから。

もちろん院長がこのキチキチの診療スタイルでイケると判断したからこの診療スタイルなのだろうが、あまりにも体に無理が祟りやしないか。

アポを45分ずつにするとか、午前の診療時間を15分でも短縮するとかしないと、院長が倒れてしまいそうで心配だ。

もう50代に入っているのだし、少しペースを落としてもいいのではないだろうか。集患に困っているわけでもないし。

まぁそれは、私がただの従業員だから思うことなのだろうな。

経営者の目線に立つと、そうは言っていられない事情もあるのだろう。従業員に給料払わなきゃいけないしね。

とにかく私が15分を死守していれば院長が少しくらいは休めたはずなので、ほんとにごめんなさい!!!!!

探針の目利きができるように努めます。