月桂冠『花鳥風月』(1992)のCMの好きなところを語る。

私は1992年に放送されていた、月桂冠『花鳥風月』のCMが大好きだ。92年って、私の生まれ年。

YouTubeで何度も何度も再生している。これがビデオテープだったら、とっくに擦り切れている。

このCMを見ると、自分が日本に生まれ育った日本人であることを意識させられる。そしてそれに誇りを感じる。愛国心を掻き立てられるのだ。

しかしなぜ15秒や30秒のCMに、ここまで心を動かされるのだろう。少し真剣に考えてみた。

するとこのCMには、私の“好き”がたくさん詰まっていた。

月桂冠『花鳥風月』(1992)のCMの好きなところ

月桂冠『花鳥風月』のCMの好きなところを語っていく。

神社と真田広之の対比

撮影場所は京都の伏見稲荷大社だ。CMは、外国人にも有名な“千本鳥居”のもとを真田広之が通る場面から始まる。

その鳥居の赤と、真田広之の深い紫のスーツの対比がものすごく美しい。冒頭から一気に映像に引き込まれる。そして、それほどまでの対比の強さを、鳥居の間を差し込む光が中和してくれているのも良い。

日本を代表する美しい神社と、国宝級美男の真田広之が合わさった時点で、120%間違いのないCMだ。

真田広之の熱い眼差し

真田広之が酒瓶を持ってこちらへと歩いてくる場面。真田広之の熱く真っ直ぐな眼差しに、心の臓を射抜かれる。

一度だけまぶたをそっと閉じるのも素敵。閉じる瞬間のまぶたから、大人の男の色気がダダ漏れだ。

「大人の男の色気」とは言うが、このときの真田広之は30歳。今の私より年下だ。年下に対して「大人」と言うことに、やや情けなさを感じる。

33歳の私は自分のことをあまり「大人」だと思っていない。同級生のことも。大体にして「大人」という言葉が不釣り合いだ。見た目も思考も。おそらく30歳の真田広之のような30代男性は絶滅している。そういう意味でも真田広之は国宝だと思う。

そして、一升瓶をぶら下げて歩いても様になるのは、やはり真田広之しかいないだろう。真田広之以外の人間では、ただのアル中にしか映らない。

真田広之の視線の動き

和服姿の女性に気付いたときの視線の動き。滑らかで美しい。そして女性の目を見つめたまま微笑んで、ゆっくりと会釈をする。その様から色気が大放出している。

会釈をし終えた後、一度まぶたを閉じて、顔の向きに合わせて視線がしっとりと流れていく。その場面では、特に息を飲む。この国のどれほどの女性が心臓を持っていかれただろう。どれほどの男性が真似をしてみただろう。きっとうまくはいかなかったはずだ(やったクチ)。

なお、このCMのパロディを作った人がいる。正直結構好きだ。

この方を見ると、やはりこのCMでは、真田広之の視線の動きが印象的なのだとわかる。みんなパロディ作ってくれないかな!

映像のディゾルブ

女性に会釈をした後の映像のディゾルブ。これにより、流れていく視線にさらに「何を思っているんだろう」と想像を掻き立てられる。

真田広之の演技もすごいが、演出家のアイディアもすごい。

真田広之の横顔の美しさ

会釈をし終えた後や酒を飲む場面で真田広之の横顔が大きく映し出されるのだが、それが美しすぎる。眉間から顎先まで、まるで彫刻のよう。本当に見惚れるし、溜め息が出る。

「眼福」という言葉は、真田広之の横顔を拝む人のために生まれた言葉だと思う。

真田広之の男前な髪型

真田広之の髪型が男前すぎる。オールバックと言うのだろうか。呼び名はわからないが、額をすっきりと出し、ポマードで整えているところに“男”を感じる。

令和の30代男性がこの髪型をしていたら、それだけで惚れてしまいそうだ。ツーブロックとか、毛先を遊ばせるとかしなくていいから、ピシッとキメてみてほしい。見てみたい。令和の男前を。

真田広之が酒を嗜む姿

真田広之が酒を飲む場面。まぶたを閉じて流し込み、目の前に広がる景色と酒を嗜む姿に、大人の男の落ち着きや余裕を感じる。超エロい。

真田広之のイケボ

真田広之は声も良い。だから一層、「日本の赤は、まぶたに熱い。日本の赤は、心に溶ける。」というナレーションが胸に沁みる。

CMの最後に「月桂冠」というナレーションが入るのだが、それの「冠」の響きが特に好きだ。空気を含んだ優しい声が色っぽい。真田広之は目だけでなく、耳までも幸せにしてくれる。

日本の夏と冬を感じられる要素

夏verでは、風鈴と鱧の湯引き。冬verでは、紅葉と蟹。風景と食物で日本の季節を表現しているのが素敵だ。風情がある。

最近は春と秋が短く、夏と冬が主役になってしまっている気がするが、こういうのを見ると、日本には四季があることを……あったことを……思い出す。

テロップ「ここが、僕の国です。」

CMの最後の方で現れる「ここが、僕の国です。」というテロップ。

真田広之に読ませることもできたのだろうが、そうはせず、真田広之を背景に、テロップだけで伝えようとするところに、日本人の奥ゆかしさみたいなものを感じられて、すごく良い。これも演出家の技量なのだろう。

タイアップ曲:安全地帯『あの頃へ』

CMのタイアップ曲、安全地帯の『あの頃へ』。これがこのCMをより美しいものにしている。玉置浩二の包み込むような歌声に、どこか懐かしく温かい旋律。これが日本の風景と真田広之と交われば、とんでもないものが生まれるのは当然のことだ。

日本古来の風景×真田広之×安全地帯という三種の神器によって、このCMは後世に語り継がれ、海を越えて愛されるものになったのだと思う。

日本の美が凝縮されたCM

月桂冠『花鳥風月』のCMでは、真田広之のみならず、安全地帯の曲も、映像も、すべてが主役だ。すべてが美しい。このCMに、日本の美が凝縮されている。

昨今の真田広之の活躍のおかげで、このCMはYouTubeを通して若い世代の目にも触れ、海をも越えた。この“作品”はこれからも我々日本人の心を動かすだろうし、異国の人の心にも、日本を感じさせるだろう。

素晴らしい“作品”を生み出してくれた人たちに感謝を伝えたい。そして、またこんな“作品”を生み出してくれること、こんな“作品”で溢れさせてくれることを、願ってやまない。